韓国歳時記

 「韓国のお正月の話」


久々にお正月にあわせて韓国に帰省した。お正月の前日から大雪だった。今年のお正月は、去年アメリカから発信した世界的な経済不況の中での帰郷である。おまけに大雪の影響で、多くの国道や高速道路では足止めをくらった。だがそんな不況と悪天候の中でも、帰省客達の笑顔は家族相逢の喜びを物語っている。
 韓国のお正月と言っても、中国、日本と同様一年で一番喜ばしい名節である。一年の始まりでもあるし、又、新しい一年の幸福を願い、気持ちを一新し改めて目標や人生を計画たてる日でもある。あえて中国、日本と多少違うところをあげるとすれば、韓国は新暦と旧暦のお正月が共存していることだと思う。これには、もともと旧暦を過ごした習慣を30年くらい前の朴大統領のときに新暦に変え、一時期は全国が新暦の新年を祝うようになったが、その後国民の声を反映し再度旧暦に戻したという経緯がある。正確なところは分からないが、八割方の家庭では旧暦のお正月を過ごしているか思う。中国と同様「お正月」と「仲秋節」は一番重要な名節であり、この両日は必ず本家に帰り家族団欒の日々を過ごすのが慣わしである。
 「ソル」とは旧暦の11日、つまり新年が始まる始めの日である。「ソル」には朝から「茶礼」と言う祭事を行う。一般の韓国の家庭では四代の上の先祖まで亡くなった日に祭事を行う。祭事だけで年八回、それに加えてお正月と仲秋節の茶礼を合わせれば年十回もの祭事となり、これは長男の家庭にとってはかなり大きな負担となっている。そんなわけで近年では、その数を半分くらいに減らす家庭が増えている。「茶礼」とは名節の朝に行う祭事である。普段の祭事との違いは朝一番に行うということ、‘無祝単盞’つまり普段の祭事にはある祝文朗読を省略し、先祖に対し三杯差し上げるお酒を一杯だけ差し上げることを言う。まだ、茶礼は四代上の先祖から順々に一度に行う。このようにして先祖を思う気持ちと共に、今年一年も幸せに暮らせるようご先祖に祈るのである。茶礼が終わったあとで新年における初めての食事を家族みんなで一緒にいただく。食事には色々な正月の食べ物があるが代表的なのは「トック」である。「トック」は餅の入った料理で、日本でいえばお雑煮にあたるものである。食事が終わったところで「セベ」を行う。「セベ」とは新年の挨拶を意味し、年配の方々に順番に礼をする。挨拶を受けた年長者は、若年者に‘德談’と言うよい話しをしたり、今年の希望がかなう様に若者を励ましの言葉をかけるのが慣わしである。こうして新年の挨拶が終わったところで、ご先祖様のお墓参りに出かける。お墓参りを終えた後は、お寺に行ったり、親戚、師匠など敬愛する先生方に年始回り行く。お正月と言えども多忙な一日である。
 韓国がいまだに儒教の国と言われるのは、こういったご先祖や年配者を敬う生活習慣があるからだと思う。私自身も儒学についてとても詳しいというわけではないが、いつも儒学の教えを学習する姿勢を失わず、「ソンビ」として生きてゆきたいと思う。「ソンビ」とは昔、高い学識や教養を身につけていながらも質素な生活を送っている人をさす言葉である。人を敬愛し、ものごとの分別を持って社会正義を実現することが「ソンビ」の生き方である。だが残念なことに、今の韓国ではどんどん「ソンビ」の精神性が薄れ行くのが見える。韓国は20世紀初頭から大変な歴史の波動に巻き込まれた。日本の植民地時代、信託統治、朝鮮戦争、南北分断、学生革命、軍事革命、独裁政権などなど数えきれないほどの数々の歴史的事件を経て、ようやく21世紀にたどり着いた。こうした多難を持った韓国は、一方では周りの国々から「東方礼儀之方」との賛辞も受けながら歩んで来た歴史だと私は思う。そんな美しい礼儀、風習をこれからも失う事なく大事にしていくことを祈る。

2009年2月 






「어버이날」5月8日

五月八日、韓国では「親の日」である。昔は「母の日」だったが父の日が別にないので父も一緒にとの話で「親の日(어버이날)」に制定された。日本では5月の第2日曜日になっているが韓国は曜日でなく決まって五月の八日である。








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